事務員さん

事務員さんに関する出来事s。
1口出し
事務員さんは人の仕事に口出しをする。私が来て間もない頃、社長が蔵を離れることが多かった。このため、私とisoさんは指示された作業を完了すると社長を捜し次の作業を聞くのが常だった。一指示一作業制。事務員さんがある日言った。「いっぺんにたくさん作業を聞けば。」もっともな意見だ。誰もが言いたくなるかも知れない。私も社長に言った。社長には社長でより確実に間違いなく作業を指示するという意図があったように思う。ともかくこれは特別に不自然な事では無いのだけどその後頻繁に似たような出来事があって、私が彼女を第一種口出し人と認定するに至った最初の出来事である。
私が巻き藁(空手道具)を作る場所を念入りに奥さんと打ちあわせ、駐車場前に決定した。勤務時間後、穴を掘っているときに事務員さんが通りがかった。第一声「ここにあったら溝にはまらない?」私は説明してあげた。溝は近くにあるのは確かだ。しかし巻き藁には両面がある。私は溝と逆の方から正拳突きをするのだと言うことや、正拳突きは回し蹴りなどと違って立つ位置を動く必要が無いこと。そしたら彼女は次にこういった「ここに立てたら通る邪魔にならない?」参った。もっともな意見だった。何かを立てたら通れなくなる建設に際しまず最初に浮かぶ不安だろう。しかしちゃんと周りを見て確認してから行ってほしい。ここを一体誰がどういう目的で通るのだ?ただ難癖つけたいだけとちゃうんか?私は丁寧にこう答えた。「その件関しては十分に検討した。ここは通る必要がある場所ではない。ここを通る人は十中八九招かれざる客なので通るのを邪魔した方が良いんです。」
彼女は良く人の仕事に口を出す。その多くは思いつきを言っただけの素人の意見なのであまり相手にしないようにしている。
2責任転嫁
 ある日私は蔵を閉め帰る準備をしていた。蔵の出口の前には物を干すことが多い。そこに彼女が来た。彼女と言っても、もちろん恋人ではなく事務員さんの事だ。彼女曰く「戸を閉める前に洗濯物が干してないか確認して下さい。」つまりその日は干し物が干されてあったのだ。私はなるほどと思った。確かに確認すべき事ではある。しかし仕事が終わるという安堵が生む油断、私には必ず確認しない日があるだろう。そこで私は扉に張り紙をした。ちょっと待て外に何か干し忘れていないか?と書かれた紙だ。私はなかなかのできに満足した。そのままではなんでもない話しなのだけど後日奥さんが言った。「事務員さんが自分の仕事を忘れただけなのに人の所為にしてねぇ」なるほどと思った。確かに彼女の言葉に私を責める意志が含まれていたように思う。それも必死の。
 今日事務室を通って帰るときisoさんが困った。事務室に入るのに段差が大きいので踏み段一段あるのだがそこが黄色の線で囲まれキケンと書かれている。isoさんはおろおろしている。私の中で一つの推論ができあがったので、容赦なくキケンのケの字を踏んで通った。isoさんも安心して通った。私の推論はこうだ。事務員さんは最近この段差を踏み外してこけた。こけたのはこの段差が悪いので今後間違いがないように書いた。果たして私の推論は半ば当たっていた。食事時その話が出たのだ。半ばというのは彼女が自分で書いたのでは無く営業さんに書かせたというところがはずれだったのだ。社長曰く「キケンはセンス悪いな。しらんひとが見たらびっくりして通れへんやろ」私「ところであの段差はキケンなんですかね?」社長「いやここ三十年で初めてちゃうか」
事務員さんのおもしろ話が始まる。
 店の前の水たまりにはまったので、セメント工が工場のメンテに来たときついでに埋めさせた話し。しかし結果上流により大きな水たまりができた。以前から社長は穴は安易に埋めるな埋めたら別のとこが水たまりになると言っていたという。
3守る
 彼女と社長が喧嘩した話し。
会社に電話が来た。送り荷に伝票が入っていなかったと言う。伝票を入れるのは彼女の仕事だ。彼女はこう答えた「本当に入ってませんか?底にありませんか空けたときこぼれてませんか?ちゃんと確認しましたか?ちゃんと入れましたよ」その件で社長は彼女に注意をした。「あのなそういうときはこう言うや。ではこちらから伝票をお送りします。」そこから喧嘩になった。彼女は伝票を入れたと言い張る。話にはならない。彼女が問題にしているのは自分が入れ忘れていないと言うことその一点で、社長は彼女が入れたか入れないかは気にしていない。原因がなんであれ伝票が無くては支払いができないのが一番の問題なのだから。彼女は最後までこう言った。「私は入れました。」
4診断結果
彼女は責める視線をもっています。一番ストレートに出るのが口出し過度という病理。他人も自分と同じだと感じるのが人間、盗人は盗まれることに怯え人殺しは殺されるのに怯えて生きて行かなくてはなりません。彼女も例にもれず、多くの責める視線から身を守らなけらばなりません。人に責任転嫁する事に関しても説明ができます。さらに深読みすれば。人にさせるというのも責めからの防衛策と言えましょう。